権利範囲確認審判の審決取消訴訟[商標]について
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韓国知的財産権情報

権利範囲確認審判の審決取消訴訟[商標]について

投稿者
UNIS JP
投稿日
2017-04-17 11:28
閲覧数
1496
少し前になりますが、商標判例第40号(2014.9)に弊所が勝訴した事件が載録されました。
この冊子は、審判官の専門性を高め、審判の質を向上させるための審判官補修教育教材として編纂されたもので、
掲載された判決文は2014年4月~6月に大法院及び特許法院で言い渡された判決のうち、特許審判院の審決が取消された事件と、
勝訴事件のうち、審判実務に必要な重要事件を中心に集録されたものです。

掲載の事件は、自治体を相手にしたもので、地理的名称の該当可否の判断基準を提示したという面で商標法的にも重要な意味をもつ先例を作りました。

以下に掲載内容を一部省略してご紹介いたします。

特許法院 第4部 判決
事件      2013ホ7403 権利範囲確認(上)
原告(脱退)    金○○
原告継承参加人    石谷黒豚 営農組合法人
被告      谷城郡

主文
1.特許審判院が2013年8月6日 2013ダン169号事件に関して行った審決を取り消す。

理由
1..基礎事実
ア.この事件の登録商標
(1) 出願日/登録日/商標登録番号::2005.10.14./2006.7.24./第671500号
(2) 構成: 석곡(石谷(ソッコク))
(3) 指定商品:商品類区分 第29類の豚肉、鶏肉、牛肉、羊肉、カモ肉、加工肉、七面鳥肉、兎肉、キジ肉
(4) 商標権者:原告継承参加人

イ.確認対象標章
(1) 構成: 석곡흑돼지(石谷黒豚、ソッコクフッテジ)
(2) 使用商品:豚肉
(3) 使用者: 被告

ウ.この事件の審決の経緯
(1) 被告は2013年1月28日 特許審判院に、原告(脱退)を相手に、確認対象標章は商標法第51条第1項第1号、同項第2号、同項第3号に各該当することから、
この事件の登録商標の権利範囲に属さないと主張し、消極的権利範囲確認審判を請求した。
(2) 特許審判院はこの事件の上記審判請求を2013ダン169号として審理した後、2013年8月6日「被告はこの審判を請求することができる利害関係人として、
確認対象標章は、商標法第51条第1項第2号、同項第3号に各該当し、この事件の登録商標の権利範囲に属さない」という要旨の理由で被告の審判請求を引用するこの事件の審決をおこなった。
[認定根拠] 甲第1、2、3号証の各記載及び弁論全体の趣旨

2.審決取消事由の要旨及び当事者の主張
ア.審決取消事由の要旨及び原告継承参加人の主張
(1) 被告が実質的に豚肉に「石谷」という商標を使用している、もしくは使用しようとしているかが不明確であり、
一般需要者や取引者が認識するに困難な内部ホームページ、または内部郡政白書などを通じてのみ言及していることから、
実質的な利害関係人に該当しない。したがってこの事件の審判請求は利害関係人ではない者により提起されたものとして、不適法なため、却下されなければならないにも関らず、
被告を利害関係人と見て本案の判断に進んだこの審決は違法である。
(2) 確認対象標章は、この事件の登録商標と同一、類似した標章で、その使用商品もこの事件の登録商標の指定商品と同一であることから、
この事件の登録商標の権利範囲に属する。また、「石谷」は顕著な地理的名称に該当せず、また「石谷」が被告の姓名や名称などに該当しないだけでなく、
豚肉の産地表示にも該当しないものであることから、この事件の登録商標は商標法第51条第1項第1号乃至第3号に該当しない。したがって、
確認対象標章がこの事件の登録商標の権利範囲に属さないと判断したこの事件の審決は違法である。

イ.被告の主張
(1) 被告は「石谷」という名称を使用して石谷面で生産される黒豚のブランド化事業を推進し、ホームページなどで「石谷黒豚」という用語を持続的に使っており、
たとえ被告が現在、これを使用していないとしても、被告の上記事業推進現況などを総合的に考慮してみると、被告は今後、石谷面で生産される黒豚のブランド化事業を推進し、
これを使用する意思があるものと認められなければならないため、被告に上記権利範囲確認審判を請求する利害関係がある。
(2) 確認対象標章の「石谷」は、被告に所属する面の名前を普通に使用する方法で表示したもので、被告が地域特化事業として推進している「石谷黒豚」の産地を
普通に使用する方法で表示したものであり、「石谷黒豚」として広く知られている顕著な地理的名称に該当するもので、商標法第51条第1項第1号乃至第3号により
この事件の登録商標の効力が及ばないため、確認対象標章はこの事件の登録商標の権利範囲に属さない。

3.この事件の審判請求の適法の是非
ア.判断基準
商標権の権利範囲確認審判は、審判請求の利益がある場合に限り、審判を提起できると言え、この事件の審判請求のように商標権者ではない利害関係人が、
自分の標章が登録商標の権利範囲に属さないことを具体的に確定するための消極的権利範囲確認審判を請求するためには、自分が現在使用していたり、
将来使用しようとする標章に関して商標権者から権利の対抗を受けるなどの業務上の損害を受けているか、損害を受ける恐れがあるなど、法的な不安を感じている場合に限り、
また、このような法的不安を除くために消極的権利範囲確認審判を受けるのが効果的な手段になる場合に限り、審判請求の利益が認められ、審判請求が可能だと言え、
商標権者ではない利害関係人が使用または使用しようとしてもいない標章を確認対象標章として、その標章が登録商標の権利範囲に属さないという審判請求をすることは確認の利益がなく、
不適法であることから、却下されなければならない(最高裁2005.10.14言渡し 2004フ1663判決、大法院2000.4.11.言渡し 97フ3241判決など参照)。

イ.具体的判断
被告は確認対象標章を商標に使用中または使用するつもりであることを前提として、消極的権利範囲確認審判を請求したものである。
ところが、被告は2014.4.25.弁論期日に「豚肉商品を加工・販売することを業として営んだ事実がないうえ、今後営む意思もない。」と供述している。
また、被告は、①2014年3月11日付けの準備書面に「谷城郡の支援を受け、黒豚事業関連の支援を受けている“篤実な薬を飲んだ黒豚営農組合法人”は、
谷城郡の支援事業を信じて多くの費用や努力を投資してブランド黒豚を生産して販売しているように、“石谷黒豚”という地域名称を使用する権利を谷城郡が確保してくれることを要求し、
谷城郡に参考資料3号及び4号のような嘆願をしています。 (中略)上述の全羅南道谷城郡は、郡内の住民の苦情事項を解決して石谷黒豚支援事業を円滑に進めるために
“石谷黒豚”という標章が他人の商標権への抵触の有無に対する確認を求める現実的な利益があるとするものです。」と記載しており(4、5面)、
②2014年4月22日付け準備書面に「この事件の商標権者である原告継承参加人がこの事件の登録商標に基づいて権利行使を試みる場合、
“石谷黒豚”を飼育、加工及び販売する業者が権利の対抗を受け、自身の業務に損害を受けることはもとより、
この事件の被告の谷城郡も相当の費用や努力を投資した石谷黒豚ブランド化事業を全面的に中断しなければならないことから、業務に損害が生じます。」と記載している(3面)。
そうだとすれば、被告は“豚肉”商品の加工・販売業を営むため、豚肉に確認対象標章を使用したり、将来に使用する意思があるとは言えず、
また、被告が原告継承参加人から権利の対抗を受け、業務上損害を受けているか、損害を受ける恐れがあるとは言えない。

一方、乙第8、9、10、12、13、16、26、34、35、36号証、乙第81乃至87号証の各記載によると、ア.被告は石谷面を管轄する基礎地方団体である事実、イ.被告が発行した
2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2012年、各郡政白書の石谷面部分に黒豚肉を石谷面の地域ブランドとして育成するという内容が記載された事実、ウ.被告は2010年頃
「石谷黒豚ホームページ」(http://pigfood.gokseong.go.kr)を作り、現在まで石谷面で生産される黒豚肉を宣伝する内容を掲示しており、上記ホームページには
0417_1 ”のような標章が使用された事実、
エ.韓国農村公社が2006.3.頃発行した全羅南道谷城郡ドルシル圏域農村総合開発事業基本計画書に石谷黒豚が農特産物分野の主要事業として記載されている事実、
オ.被告が2010年9月頃作成した「谷城石谷黒豚(Valley Pork)ブランド化事業計画書」に石谷黒豚を地域共同ブランドとして定着させ活性化すると記載されており、
所要予算が876,000,000ウォンと算定された事実、カ.被告は2005年から2013年まで石谷黒豚支援事業に約8億ウォンの事業費を支出した事実、キ.被告は
黒豚畜産農家の育成を農政業務の一つとしてインターネットホームページに掲示している事実、ク.被告は2011年3月25日谷城文化センターで試食会を兼ねた郷土料理開発研究用役報告会を
開催したが、被告は報告会で“0417_2 ”“0417_3 ”“0417_4 ”などを
垂れ幕、チラシなどに掲載して使用した事実が認められるように、上記認定事実に照らしてみても、被告が石谷面で生産される黒豚ブランド化事業を行いながら、
上記標章を使用した事実だけが認められるだけである。
したがって、被告は“豚肉”を使用商品とする確認対象標章がこの事件の登録商標の権利範囲に属するかどうかの判断を求める確認の利益または利害関係があるとは言えない。

4..結論
そうであるならば、この事件の審判請求は、不適法であるため却下されるべきもので、この事件の審決はこれと結論を異にして違法である。
したがって、その取り消しを求める原告継承参加人の請求は理由があるため、これを引用することにして主文のとおり判決する。